making of salla

* トルコの伝統レース「オヤ」との日々 *
贋作?再現・イズニックの大きなモチーフ。

※ 2017年秋の講座情報一覧はこちら

(この記事は予約投稿分です)

レプリカというか贋作というか。

イズニック地方の古い大きなモチーフを再現してみました。

 

そもそもの発端は、前の記事の友人宅で藍で青く染めた未精練のシルク糸。

未精練なのでそのまま使って編むには縮れているしパリパリとしていて難しい。でもこれを石鹸で煮て精練すると色が落ちるかも…というか実際落ちたのでさてどうしようかと思っていた時。

とある方法でやると案外編みやすいと気づき、ふと、この糸でならイズニック地方のモチーフを作れるのでは?と思いつきました。

 

そして、4本で撚り合わせて基本の三角を試しに編んでみたら…おお、確かにあの感触。

固くてゴワゴワしてて触るとささって痛いくらいの「あの感じ」に近くなるではないですか。

 

…実は私、この時までイズニック地方のモチーフは固い糸を使っているとはいえ(セリシン(タンパク質成分)が残っているとはいえ)少しくらいは精練してあるのでは?と思い込んでいました。

ですので、どれくらいの時間精練したら固さに違いが出るのだろうか…と実験もしてたのですが…違いました。全く精練されてない糸でないと元モチーフほど固くならないのですね。

なんだ、精練は要らなかったのでは?と。これに気づいたら居ても立っても居られなくなり…

IMG_4516.JPG

取り出したるは、アンタルヤの手芸屋さんで購入した粉末の人工染料。

イズニックのモチーフはかなりハッキリした青や赤、ピンクや黄色で作られていることが多いのですが、これは草木染では出ない色です。

昔はシルク糸を人工染料で染めていたと推測されます(今現在は人工シルクを使っています)。

この粉末の人工染料はナルハンの手芸屋さんの片隅にも置かれていたもので、トルコではポピュラーなものの模様…。どれくらい昔からあるかは不明ですが、とりあえず手元にあったトルコ製の人工染料だし、と使ってみることに。

IMG_4517.JPG

パッケージ裏に記載されているトルコ語の説明文をゆっくり読みながら…ほんの少しずつのシルク糸を入れて染色実験。

粉末だからでしょうか、溶かした時の広がり方などかなり「食紅」と似た印象です。

店頭には10色以上は置いてあったと思うのですが、私が買ったのは青・赤・黄色・緑・ピンクの5色。とりあえず色の三原色とプラスα、特にピンクは三原色では出ない感じの蛍光ぽいピンクですのでこれだけは…と。

そして、イズニック地方でよく使われてる感じのスカイブルー、薄目の黄色、ピンク、そして茶色がかった緑などを様子を見ながら調合。

IMG_4522.JPG

そして染め上がったのがこちら。イズニック地方に特徴的なハッキリした色になりました(「なりました」と書くと何か違いますね…「しました」という感覚です)。

人工染料は草木染と同じく染液の濃度や浸す時間で濃淡を調整できますが、流石というか、はるかに簡単に予想通りの色へ染まってちょっと拍子抜けなくらいでした。

こんなに簡単ならそりゃあ絨緞織りのおばちゃんたちだって手間のかかる草木染をしなくなる訳だわ…と身をもって実感。

 

そして、4本撚り合わせて手持ちの古いスカーフのモチーフを再現してみたのが、一番上の写真です(実際はこれの前にもう一つ試し編みをしています)

黄色部分は写真の黄色の糸だと色が薄いので、その後別途黄色の染料にピンクを足して少しオレンジぽくしてみたりと細かく調節しつつ、元モチーフに近づけました。

なかなか…あの、自画自賛ですみません、かなりのレベルまで再現出来た気がするのですがいかがでしょうか。この作業、とっても楽しかったです。

 

ただ、実際触ってみると本物の方がもっと固くてゴワゴワとしています。

とある処理を糸にほどこして編みやすくしたのですが、案外何もせずにそのまま使った方がいいのかな?とか片撚りの方が良いのかも?などなど…他にもいくつか感触を残すために工夫すべきところが見つかったので、さらに再現度を上げるべく実験を重ねようか思っているところです。

 

 

それにしても…こうやって再現をして思うのは「材料は本当に大事」ということ。

特にイズニックのこのタイプのモチーフは、未精練のシルク糸で太く大きく編まないと元の雰囲気が出ませんし、逆に言えばこの糸を使えばこの地方独特のある意味稚拙にも見えるような大きな手加減のモチーフにいとも簡単に近づくんだ!と、実際編んでみて納得しました。

もちろん、ある程度は手加減も含めて似せてみてはいるのですが…さほど努力せずとも似てしまうのは素材の力としか言えません。

 

これを現行のポリエステル糸などで編んだら全く違う印象のものになってしまいますし(雰囲気は残りますが)、さらに例えば、シルク糸でも細くて精練された柔らかめの糸+細かな手加減で編むと、イズニックではなくブルサのモチーフにより近い雰囲気を持ってしまうことでしょう。

編み図だけを見るならイズニックとブルサのモチーフは似通った部分がありますが(ご近所ですから当たり前といえば当たり前ですが…)、この両者を決定的に分けるのは素材です。

(※イズニックのものでも細めの糸で編んだものもあって、それはブルサのものと判別がつきにくかったりします)

 

これらのことは再現する前からも知識として頭では分かっていましたが、実際に手を動かしてみないと深い部分・身体感覚的な部分では納得できていなかったのだなぁ…と反省。

そして同じ素材(もしくは近い素材)で編むことで、その地方の女性たちの感覚や思いに近づけるような…そんな錯覚が起こるほどこの再現実験は興味深くワクワクするものでした。

 

| イーネオヤ | 06:00 | - | - |
犠牲祭の羊さんではなく・・・(今年最後の藍の生葉染め)

※この記事にお蚕さまが出てきます(虫類が苦手な方はご注意ください)

庭の藍の葉がよく成長してきたので今年最後の藍の生葉染めを、と遠方に住む友人宅へ葉のお裾分けをかねて遊びに行ってきました。

写真は友人宅で飼い始めた羊さん。犠牲祭でしめる羊さんではありません。

 

この友人とは2年前、野中幾美氏に連れていただいたトルコ各地のオヤの故郷を巡る旅で約2週間ご一緒しました(その様子はヴォーグ社の『世界手芸紀行』に写真で少し見れます)。

中でも2人してオデミシュの女性組合の試みや作品の美しさ、町そのものの雰囲気などにとても感動したのですが、彼女のすごいところは帰国してから蚕を育て始めたこと。

今年の春にお邪魔した際の写真です。

蚕を育てて繭にし、そして染色して糸を引き…という作業を始めた彼女。その行動力に驚きました。だって女性組合でも蚕からは育てていませんよ!しかも個人でとは…。(ムドゥルヌの市民講座では蚕は育てていましたが…まだ形にはなってませんでした)。

 

そして今度は羊。春にお会いした時に「飼ってみたいな」と仰ってましたが、まさか本当にお迎えするとは、と驚きです。手触りがふわっふわで超可愛い…。糸車やスピンドルも見せて頂きました(時間がなくて体験できなかったのが残念!)

さて、今回はうちの庭で採れた藍の生葉を持参し、彼女のお宅で染める実験をすることに。(彼女のお家でも育てていたそうなのですが、羊さんにダメにされたとか…)

早朝に枝ごと切って、水をふりかけた上で保冷バッグに入れて持参。

写真は枝から藍の葉をむしり取った図。これらをミキサーで水と一緒に粉々にします。

そしてキッチンネットで濾した染液に、シルクの生地をそっと浸します。

実は布を染めるのはこれが初めて!ドキドキです…。

最初は緑色。

けれど引き上げて水で洗っていくうちに酸化して美しい水色に…。

干します。ちょうど晴れ過ぎずでも雨も降らず、風通しも良くていい感じのお天気です。

隣に干しているのは最初に染めた未精練のシルク糸。こっちはいかにも「藍」な色に。

 

染液の濃さや染めている時間によって色合いが様々に変化します。

でもそれは狙って出来ることではなく、かなり偶然性に左右されます。これを楽しいと思うか不安定と思うかはそれぞれですが…とても面白いと私は感じます。

コントロール不能な「自然」と共生するような感覚です。

 

この日は他にも、持参したザクロの皮で染めてみたり、ハイビスカスで染めてみたり(これは私が見学した時にオデミシュの女性組合でやってたので真似っこです)、彼女が冷凍していた桑の実(Kara dut。これはオデミシュの村に住む女性が染めてたので真似っこ…)でも糸を染めてみました(可愛いピンクになりました!)。

 

また、葉の叩き染めにも挑戦したのですが、こちらは上手くいかず…乾いた布でなく濡れた方がいいのかな?とか、布をもうちょっと厚めが良さそうとか、摘み取ったばかりの葉の方が良いというデータも、とか…二人で調べながら次回へのリベンジを誓うなど。

失敗にもまた学ぶところがあり、こうやって試行錯誤しながら挑戦することは本当に楽しいです。

 

個人的に布を染めるのは初めてだったのですが、こうやって誰かと一緒に作業をすることもまた楽しく…。

ロケーションもね、いいんです。万葉の里、という感じで…桑の木もなっている場所。辺りを歩けば染料になる草木が生えています。私の住むところも田舎なのですが、それとはまた違う時間が流れているように感じます。

楽しみを共有しながら新たな試みや異なる着眼点も得られて、非常に学ぶところの多い体験でした。

 

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